五條悟と時渡るJK〜過去いま運命論〜(dream)
□10-JKと五条悟
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1999年9月9日。
呪術協会登録の呪術師は、
首都圏各地に突発的に出没した呪霊への対応に追われていた。
ノストラダムスの世紀の大予言。
恐怖の大王がやってきて世界の終末をもたらすであろう。
昨今頻発する災害や人災、悲惨なニュースの数々に
人々が漫然とした不安を抱く中。
マスメディアに面白おかしく取り上げられ、
宗教勧誘や悪徳商法などのスピーチに利用されていた世紀の大予言は、
人々の無意識化での負の感情のはけ口となり、次第に“呪い”へと変貌していった。
※
「雑魚ばっかりじゃん」
小学生4年生、9歳の五条悟は、消えて行く呪霊を眺めながらそう吐き捨てた。
五条はまだ正式に呪術師として登録はされていないものの、幼いながら正規の呪術師を凌駕する活躍ぶりを見せていた。
この緊急事態下においては、さすがの呪術協会も駒として五条を持て余すことは出来なかった。
各地で頻発する呪霊への対応という事で、特別依頼という形で五条は渋谷へと派遣されていた。
呪術協会の命令通り、非術師の命にかかわりそうな高位呪霊を優先的に探しては祓っていくと、あっという間に任務は完遂。
あまりの歯ごたえの無さに気が抜けてしまう。
「あと面倒くさそうなのは、あれ、か……」
上空を見上げれば白いもやのような雲が渋谷の街を覆っていた。
うっすらと呪力を帯びた雲は、一般人にも並の呪術師でも視認する事はできないだろう。
“六眼”を持つ五条だからこそ見えるそれは、このまま何もなければ霧散する可能性もあるし、もしかしたら呪いへと転じる可能性もある、そういう類の現象だった。
呪いは祓える五条であるが、呪いとなっていないものを祓うことは出来ない。
必然的に上空を覆う負の雲海がどうなるのか見届けなければ、対処のしようがなかった。
「仕方ねぇ、待ちだな」
上空から視線を雑踏へと戻した五条は、時間を潰すべく渋谷の雑踏へ歩き出した。
※
――…ハッ?
取りこぼしの高位呪霊がいないか巡回していた五条は、覚えのある残穢を感じ取り思わず立ち止まる。
咄嗟に通り過ぎた人物に振り返れば、黒いバックを背負った制服姿の少女がいた。
そこで五条は違和感を覚える。
今しがた感じていた残穢が感じられなくなっていたのだ。
少女は足を止めて、道の端によると人の流れを呆然と眺めはじめた。
先ほどの残穢は気のせいだったかと思いつつ、自身の持つ“六眼”を用いて凝視する。
消え入りそうなほど微量ではあるが、彼女の持つウサギのぬいぐるみポシェットから残穢を確認することが出来た。
そこで五条は少しばかり頭を悩ませる。
名称は忘れてしまい定かではないが、呪術協会の知り合いである夜我正道が今後の参考にという名目で特別に見る機会を与えてくれた高位呪物。
五条の記憶が正しければ、“呪いの王”の二つ名を持つ特級呪霊のその呪物と、目の前の少女の残穢の痕跡は同じものであった。
ただ腑に落ちないのは、“呪いの王”の呪物の残穢はもっと濃厚でなければ可笑しいし、仮に残穢をここまで抑えられる封印を施しているのであれば、今度はその封印の痕跡が確認できなければ可笑しかった。――それを見れるだけの目が五条には備わっているからだ。
しかし、女子学生からは封印の痕跡が確認できない。
五条がしばし凝視をしていると、不意に少女と視線があった。
少女は目を瞬かせた後、満面の笑みを浮かべてヒラヒラと手を振ってきた。
そこで五条は更に不思議な現象に見舞われる。
“六眼”と呼ばれる特殊な目を持つ五条にとって、呪力の有無や術式の形などは“見れば”分かってしまう。
だが手を振ってくる人物は、それらの情報が“見ても”分からなかったのである。
――なに、あいつ?
五条は初めて自分の“六眼”が通用しない相手に、関心が芽生えた。
※
「おい」
少女が低級呪霊を倒した事を皮切りに話しかける。
少女は訝しみつつも、軽い口調で五条との会話に応じた。
バケモノを探していると言われ困惑するが、発言内容から彼女のいうバケモノが呪霊の事だと推察する五条。
「じゃあ、お前が探しているジュレイ……バケモノってどんなヤツだよ?」
「うーん、アミもよく知らないけど、“ごじょーさとる”ってバケモノだよ」
自分の名前を出されて、五条は俄かに警戒心を強める。
「……オマエ、なにもの?」
探るようにそう聞けば、あっけらかんとした返事が返ってくる。
「アミはアミだよ」
“アミ”と名乗った少女に対し、五条も名乗りを上げる。
「“五条悟”は俺」
その後、およそ噛み合わない会話が繰り広げられた。
どうやらアミは“五条悟”をバケモノ、呪霊の事だと認識しているようだった。
五条は話を合わせるが、アミにとっては理解できなかったようで勝手に会話を切り上げられる。
「ごめんね、アミ忙しいから、もう行くよ。バイバイ」
なぜアミが五条悟を探していたのか明確な答えを得られないまま立ち去ろうとしたため、五条は反射的に引き留めようとその手を掴んだ。
「ッ!?」
アミの手に触れた瞬間、自身の持つ“無下限呪術”の術式が強制的に解かれた。
生身となった感覚に驚き、慌てて手を放す五条。
手を離せば再び“無下限呪術”が問題なく展開される。
何かの術式か?と思い、全集中でアミの術式を探れば、先ほどよりも更に不可解な現象に見舞われる。
「オマエ、なんなの? ぐにゃぐにゃして、術式がはっきり見えねーんだけど」
どうやらアミの中に術式はあるようだが、何の術式なのかは判然としなかった。
まるで別の力に邪魔されるように歪んでいる術式を見て、五条は呆然としたのであった。
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